これまでにも高齢警備員をテーマにしたブログを公開していますが、再度このテーマを選んだのは警備現場でのある事案がきっかけです。 テナントの職員から「知らない人が勝手に休憩室に入って椅子に座っている」との通報があって男性隊員2名が現場確認、警備員の制服を着た高齢男性を発見したので事情を聞いたが要領を得ず、最寄り駅を案内して退館してもらいました。警備員の制服姿でしたが、我々の会社とも施設とも無関係の警備会社、どこかの交通誘導警備員と思われます。対応した隊員曰く「認知症の老人が徘徊して迷い込んで来た感じ」だったと。事情を尋ねても会話にならない、なぜここにいるのか説明できない、歩き方もヨロヨロと真っ直ぐ歩けない状態だったそうです。このような高齢者が警備業務を遂行できるのか疑問ですが、このようなある意味『危ない警備員』が少なからず存在しています。頭も体も衰えてる高齢者が働かなければならない事情を考えてみます。

50代は若手扱い
世間的には20代~30代前半の年齢層が若手と扱われます。しかし警備業界は70代がゴロゴロ、20代~30代の警備員は10人に1人ぐらいの割合、故に50代は若手扱いというわけです。どこの警備現場でも警備室はまるで老人ホームのような光景です。「足が痛い」「疲れた」「しんどい」こんな言葉が日常的に飛び交う職場、それが施設警備現場です。実際に歩き方もヨロヨロ、壁や柱の寄りかかっての立哨、そんな老人が何を警備するのか、警備の役に立つのか、緊急時に迅速な対応ができるのか、不安の種が尽きない高齢警備員。だからと言って「高齢者は使えない」などの発言はコンプライアンス違反になることもあります。50代が70代のフォローをする、まさに老老介護です。

自身の衰えを認めない高齢警備員
加齢と共に目や耳が悪くなるのは仕方ないことです。しかし高齢警備員の中には、体の衰えを恥だと思っている人がいるようです。指示書が読めない、クライアントや隊長の指示を聞き取れないなど業務に支障をきたすことがあっても病院に行かず眼鏡や補聴器を使わない、誰かに指摘されると怒ったり言い訳したり意地になる、こんな高齢隊員とは必要以上に関わらないようにと同僚から距離を置かれることになります。

老後破産に怯えて
年金だけでは生活できない、貯蓄が不十分など個人の経済事情はそれぞれです。ただ一つ言えることは、定年退職後に悠々自適な生活ができるのはほんの一握りの国民だということです。おそらく、この先の年金受給事情はますます厳しくなるでしょう。足腰の衰えや脳の働きの悪さを自身で感じていても働かなければ生きて行けない、生きるためには仕方がないのです。中には高齢でも元気はつらつな人もいますが、ほとんどの高齢警備員は老体に鞭打って働いています。だからできるだけ動きたくない、働かないおじさん(爺さん)が増えるのです。こうした高齢隊員は人数合わせ要員、業務では役に立たず、でも当の本人は老後破産にならないために職場にしがみつくしかないわけです。

まとめ
①警備業界は70代がゴロゴロ、50代は若手扱い。
②自身の衰えを認めない高齢警備員。結果的に他の隊員の足を引っ張ることに。
③老後破産に怯えて働かざるを得ない高齢警備員。
以上、高齢警備員の事情についてでした。 近年の日本は少子高齢化が加速、若者が激減、労働人口の高齢化が進んでいます。そして高齢者も昭和時代のように年金だけで生活できず、生きるために衰えた体で過酷な労働に従事しなければなりません。こうした現象は警備業界だけでなく、日本全体の労働事情の問題です。みんないつかは高齢者です。決して他人事ではありません。私だって冒頭で紹介した徘徊警備員になるかもしれないのです。 低賃金の日勤警備員は貯金が難しいです。私もこのブログを書きながら「10年後も警備員やってるのかな」と憂鬱な気持ちになりました。職場の高齢隊員を見ていると失礼ながら「同じようになりたくない」と思います。自身の資産形成・節約貯金を真剣に考える反面教師にしています。