どんな仕事でも辞めるには何か理由があるはずです。世間一般よりも高収入で職場の人は良い人ばかり、残業も休日出勤もなく、休暇も思い通りに取れる。そんな職場環境も労働条件も給料も満足な仕事なら長く働きたいでしょう。とは言っても家庭の事情や自身の健康上の問題で辞めなければならない場合もあるでしょう。ここでは職場環境の原因に絞って私自身の体験や元同僚などの同業者からのリサーチから原因を探ってみます。
休憩時間が少ない
施設警備は出入管理や巡回などの通常業務以外に突発的な事案にも対応しなければなりません。人倒れで救急車要請、館内で事件が起きれば警察に臨場要請など。そうなると休憩(待機)中の隊員が対応しなければなりません。そして対応に時間がかかるとその隊員は本来の持ち場に時間通り交代できず、交代→休憩のはずの隊員が休憩を取れずに持ち場に残らなければなりません。
ほとんどの警備会社は『最低賃金×実働時間』で給与計算されてます。拘束時間で計算されないので休憩・待機時間は無給です。この時間帯に緊急対応や交代が来るまでの延長勤務は給料が発生しないわけです。こうした対応で時間外勤務があった場合、隊長が会社に申請して給料に反映されれば良いのですがそんな現場は滅多にありません。
霞が関中央省庁から異動した劇場勤務ではこのようなことは日常茶飯事でした。公演終了後、タクシー利用の観客のために呼び込み誘導業務がありましたが、この業務が時間通りに終ることはまずありません。必ず時間オーバー、特に降雨降雪などの悪天候の日はタクシーが少なく観客が捌けない、持ち場の隊員は次の持ち場に行けないので交代できない、休憩予定の隊員は時間延長での業務となってしまいます。私はこれで受付に4時間立ちっぱなし、休憩どころかトイレにも行けなかったことがありました。
このような契約と違う労働時間について警務課長に申し入れしましたが「これが普通ですから」とろくに話を聞いてもらえませんでした。労働基準監督署に確認しましたが、給料が発生しない労働の強要は違法行為です。それを普通と認識している会社と管理職、こんな会社で働けないと退職を決意しました。
仮眠室の環境が悪い
24時間当直勤務(以下当務)では仮眠時間があります。仮眠室の環境は現場によってかなり差があるようです。大抵はベッドが設置されてるようです。私が空港で当務をやってた時は女子待機室にカプセルホテルのようなベッドが6床でした。しかし、現場によってはベッドがなく、畳の部屋で雑魚寝状態なんて話も聞きます。また、布団はペシャンコのせんべい布団、シーツはいつ洗ったかわからないぐらい黒ずんで気持ち悪くて使えないなんて現場もあるようです。
私がこれまで経験した現場はどこも寝具業者が定期的に布団・シーツ交換に来てました。現在の現場もちゃんと交換してます。逆に寝心地が良すぎると眠りが深くなって勤務の時間に起きられないなんてこともあるかもしれませんが、最低限の環境は整えてもらいたいですね。
劣悪な人間関係
警備員に限ったことではありませんが、職場の人間関係の良し悪しは業務に影響を及ぼします。特に警備員は性格にクセがある人が多いと感じます。慢性的な人員不足で採用のハードルが低く、人間性に難ありでも欠格事由に該当しなければ簡単に採用されます。パワハラが当たり前の時代を生きてきた高齢者、体育会系、幅を利かせる古参隊員、挨拶しない若手隊員などクセ者揃いの警備業界で良好な人間関係を構築するのは至難の業です。
隊長・リーダーが独裁者
隊長やリーダーに気に入られれば長く働けるでしょう。でも逆に嫌われたら最後、パワハラ・モラハラの標的にされます。独裁国家・恐怖政治が成り立っている警備隊は隊長命令には絶対服従、異議を唱える者は排除されます。こうした軍隊を真似たような警備隊は多いです。隊長は特定の隊員に日常的なハラスメント、どんなにひどい事をしても誰にも咎められることはない、下っ端隊員は余計な口出しなどすれば自分がターゲットにされるとわかっていますから。独裁者の顔色をうかがってビクビクしながら仕事してもメンタルを病むだけです。
モニターで監視される
現在の複合ビルでは防災センターでのモニター監視業務が主な仕事です。監視業務は館内で異常がないか不審者や事故がないかを見張るのが目的です。でも中にはクライアントがモニターで警備員を監視する現場もあります。
私が最初に在籍した警備会社、私服保安員として働いていましたが途中の約2年間、土日だけお台場の某ショッピングモールで制服警備として仕事してました。元請け会社が男性警備員だけなので女子隊員は下請け会社の私達が配属されました。元請け隊員は防災センター詰め、我々女子隊員は館内巡回が主な業務でした。ある日、女子隊の責任者が防災センターに入ったらモニターを見ていた男性隊員が「あ~、今○○さんが歩いてる」と笑っていたそうです。○○さんは女子隊員で何がおかしくて笑っていたのかはわからなかったそうですが、この話を聞いた時『コイツ等(元請け隊員)と仕事したくない』と思いました。普段から明らかに下請け女子隊員を見下すような言動があってこの会社自体が嫌いでしたが。
仕事がキツイ
猛暑激寒・風雨降雪での長時間の立哨がキツイ、当務がキツイなど人によって様々ですが警備業務は楽な仕事ではありません。体力的なキツさで辛くなる人もいれば座哨の現場でもクレーマーが多い現場で精神的にキツくなる人も。立ってるだけで給料がもらえると勘違いして来た未経験者が覚える事が多くて付いていけなかったなんてこともあります。『仕事がキツイ』と言っても何がどうキツイかは人それぞれです。
まとめ
①休憩時間が少ない。スケジュール通りに休憩時間が取れない現場が多く、時間外労働に対する賃金を払わない違法行為が普通に行われている警備会社多数です。
②仮眠室の環境が悪い。ベッドが設置されて定期的に寝具交換されている現場は問題ありませんが、現場によっては畳の上に雑魚寝状態、寝具が汚いなど不衛生な仮眠室もあるようです。
③人間関係が劣悪。慢性的な人手不足なので採用のハードルが低く、クセのある人間が集まりやすいため、良い人間関係を築くのが難しい業界と言えます。
④隊長・リーダーが独裁者。独裁国家のような警備隊では隊長のお気に入りにならなければ生き残れません。仮に気に入られたとしても常に独裁者の顔色をうかがってビクビクする毎日になります。
⑤警備員がモニターで監視される。クライアントの担当者がモニターで警備員を見張ってる現場もあります。
⑥仕事がキツイ。一番単純明快な理由に聞こえますが何がどうキツイかは人それぞれです。
以上、警備員が辞める理由をあげてみました。リサーチしていて「給料が安い」を一番の理由にしてた人がほとんどいなかったのは意外でした。「人間関係が悪いし、給料も安いし」みたいにいくつかの理由で給料のことをあげる人はいましたが、給料が主な理由の人はいませんでした。私もこれまで警備会社を退職した時を思い返すと、給料よりも職場環境や人間関係が主な原因だったです。とは言っても、どの警備会社でも満足の行く給料はもらってませんけどね。警備業界は給料以上に辞めたくなる要素が多いということです。