施設警備は接客業務が多く、その分クレームが発生しやすいです。一般の人に対する偉そうな態度や勤務態度が悪いとのクレームが多いです。また、施設のルールを守らずに注意された客が逆ギレしたり、警備員自身は真面目に勤務しているつもりでもだらけているように見えてしまうことがあるかもしれません。
警備業法第15条
警備員が新任教育や現任教育で必ず教わるのが『警備業法第15条』、警備員の権限や業務範囲について定めた大変重要な条文です。条文は割愛しますが、警備員は特別な権限や行使力がないとの内容です。警察官のような取り調べや職務質問、現行犯以外の逮捕はできません。また、他人の権利を侵害したり、個人や団体の正当な活動に干渉してはなりません。
ご協力お願いします
施設警備員はお客さんや職員に対して、お願いするだけで強制してはいけません。禁煙エリアでの喫煙、階段での座り込み、自転車の無断駐輪、車の無断駐車など施設のルールを守らない人への注意は「ご協力お願いします」のスタンスでなければなりません。命令口調はご法度、クレームの原因になります。しかし、中には注意されても無視したり逆ギレするタチの悪い人もいます。大声で恫喝、暴力、破壊行為などの迷惑行為やトラブルは警察に通報して対応してもらいます。
施設警備現場で発生するクレーム
警備員に対するクレームは主に警備員の態度に関するものと、施設の入館や利用のルールについての不満に大別されます。
警備員の対応が偉そうで横柄に感じられる、案内がわかりづらい、言葉がはっきりしなくて何を言っているのかわからないなど警備員に問題があるクレームは少なくありません。例えば警備員に「トイレどこですか」と聞いた時に「あっち」と指で示すだけの案内をされたらどう感じるでしょうか。「この通路の突き当りを左です」と説明できないようでは施設警備業務は務まらないです。中央省庁の現場での出来事ですが、お客さんに食堂の場所を聞かれて「わかりません」と答えるボンクラ隊員。「ここに来て半年になるんだからどこに何があるか覚えなきゃダメだよ」と注意したら「私は食堂で食事しないから場所を知らないんです」と逆ギレされました。タバコを吸わないから喫煙所の場所を知らない、男だから女子更衣室の場所がわからない、そんな警備員は喫煙所や女子更衣室で発報があっても現場確認できないでしょう。施設内のどこに何があるかを把握できてない、それを恥ずかしげもなく堂々と言う、ハッキリ言って警備員失格です。
入館時のセキュリティチェックが厳しくて時間がかかる、スムーズに入館させろなど来館者のわがままによるクレームも少なくありません。霞が関中央省庁はこのようなクレームが多かったです。しかし、大臣や国会議員の出入りがある施設なのでセキュリティチェックを省略することはできません。いい加減なチェックで入館許可した人物が局長や幹部にアポ無しで面会に行った事案が起きると、クライアントから事実確認を求められて警備体制の不備があれば始末書を提出しなければなりません。他には館内禁煙や飲食禁止など利用ルールに関するクレームがあります。注意された腹いせに「ベンチでお茶飲んでただけで警備員に怒られた」などとクレームつけるお客さんがいます。我々警備員がお客さんに注意をする時は「すみません、ご協力お願いします」と低姿勢で話しかけますが、話を盛るのがクレーマーの習性ゆえに「怒られた」「怒鳴られた」になってしまいます。このようなわがまま系のクレームには毅然と対応します。感情的になるのではなく、施設のルールを守っていただくようお願いする、施設警備員にとっては一番しんどい業務です。
まとめ
①警備員には何の権限もない。警察官のような職務質問や取り調べはできない。
②警備員は相手に対してお願いしかできない。施設のルールを守ってもらうのも命令ではなくお願い。
③施設警備現場で発生するクレームは警備員に原因があるものと施設のルールに対する不満によるものがある。
以上、警備員へのクレームについてでした。近年、カスタマーハラスメントが社会問題になり、東京都ではカスハラ防止条例が2025年4月に施行されることが決定されました。ただ、全てのクレームがお客さん由来のカスハラではなく、警備員の口の利き方や偉そうな態度が原因の事案もあります。残念ながらこうした失礼な警備員が存在するのも事実です。そしてクレームが来る警備員は大体いつも同じ警備員です。このような問題警備員は人格にも難があるので勤務態度を改めようとしない、最終的には現場を出されて異動させられることに。異動先でも同じようにクレーム事案が多発すればまた追い出されて現場をたらい回しにされた挙句、勤務できる現場がなくなって退職、こんな隊員をこれまで何人も見て来ました。こんな警備員にならないように日々精進して勤務して行きたいです。