自分の身を守れ

2015年4月8日、イギリス・ロンドンで貸金庫業者の金庫が破られ、大量の現金や宝石類が盗まれる事件が発生しました。被害総額は推定2億ポンド(約360億円)。事件当時、勤務していた警備員は外のドアしか確認せず、室内を調べませんでした。その理由を問われて「室内まで詳しく調べるほどの給料はもらってないから」と答えたそうです。この警備員の給料の額はわかりませんが、強盗に殺されるかもしれない危険を冒してまで室内に入るほど高い給料をもらってないとの認識だったのでしょう。SNSの反応では『もらってる金の分しか働かないのは当然』との肯定派と『通報ぐらいできるだろ。日本ならこんな警備員クビだよ』との否定派に分かれています。

日本は低賃金で人を酷使する傾向にあります。低価格で優良なサービスを求める国民性が主な原因だと思われます。利益が少ないのに高度なサービスを提供しなければならない、利益が少ないから労働者に高額な賃金を払えないが賃金以上の労働力を要求する、しかし労働者も感情を持った人間です。報酬が少なければモチベーションも下がる、報酬の多寡で仕事の質が変わるのは当然のことです。

さて日本の施設警備員は勤務中に事件や災害に見舞われた時、来館者の救助のために自身の命を犠牲にしなければならないほどの賃金をもらっているでしょうか?私はもらってません。月15万程度の給料で火の中水の中に飛び込むなんて無理です。だからと言って施設内で地震や火事などが起きた時、自分が真っ先に逃げるような警備員は存在意義がありません。警備員は何をすればいいのか、どこまでできるのかを考えてみます。

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警備員も一人の人間

『自分の身を守れ』との教えを受けたのは私服保安員時代です。私服保安員は制服警備員と違い、万引き犯を見つけ出して呼び止めて補足する、犯罪者と直接対峙して現行犯逮捕する危険を伴う仕事です。犯人から殴る蹴るの暴行被害を受けることは少なくありません。私は幸い、大怪我することはありませんでしたが、当時の同僚の中には、刃物で切りつけられたり噛みつかれたりした人がいました。会社はこのような受傷事故を嫌がります。体を張って盗まれた商品を取り返しても、ほめられることはありません。むしろ、店に迷惑をかける、労災手続きが面倒、怪我で出勤できなくなったらシフト変更で誰かに穴埋めしてもらわなければならないなど面倒事を増やしたからとマイナス評価になってしまいます。

私服保安員も制服警備員も一人の人間、家族・友人・恋人などそれぞれ大切な人がいて大事な私生活があります。仕事熱心なのは決して悪いことではありませんが、よそ様の所有物より自分の身を守るのが先決です。

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自分が怪我したら他人を助けられない

勤務中に災害に見舞われた時、警備員は何をすればいいのかというのは現任教育や施設の消防訓練で学んでいます。私は勤務中に災害級の地震や火事に見舞われたことがないのですが、パニックになってオロオロしているようでは警備員失格です。現場確認、避難誘導、館内放送、通報等やるべき業務はたくさんあります。そんな中でも『まずは自分の身を守れ』、警備員はこうした指導を受けています。これはお客さんよりも自分優先で逃げろと言う意味ではありません。お客様最優先を気にするあまり、無茶な行動を取って警備員が怪我をして動けなくなったら他人を助けられなくなるからです。

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まとめ

①警備員が自分の身を守る理由。警備員も一人の人間である。

②勤務中に災害に見舞われたらまずは自分の身を守り、一人でも多くの人を助ける。『まずは自分の身を守れ』との指導は無責任に自分が先に逃げろと言う意味ではない。

以上、警備員が自分の身を守る理由についてでした。自然災害や火災、犯罪などが起きた時にお客さんはパニックに陥るでしょう。そんな時に落ち着いて対応してお客さんを安全に誘導するのが警備員です。

2024年1月2日、羽田空港で日本航空の旅客機が海上保安庁の航空機と衝突して炎上する事故がありました。乗員乗客379人全員脱出、的確な避難誘導で一人の死者も出さなかった客室乗務員は素晴らしかった、心から敬意を表したいと思います。マスコミやSNSで称賛の声が多かったですが、一部の乗客から「ペットが置き去りにされた。何で救助してくれなかったんだ」との苦情があったそうです。あのような一刻を争う事態でペット救出に時間を割いていたら客室乗務員が犠牲になっていた可能性があったのではないでしょうか。それとも乗務員が犠牲になってもいいからペットを助けろということでしょうか?冒頭で述べましたが、日本は料金以上のサービスを要求される国です。乗務員は自身を犠牲にしても客のペットを助けろと要求する人がいるのです。申し訳ないけど私はそんな要求には答えられません。だって自分の命を犠牲にしてペットを救出するほどの給料もらってませんから。


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